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【巻頭言】 |
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変革サイエンス序曲
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ワトソンワイアット株式会社 |
欧米ではかなりの昔から、「チェンジマネジメント」という研究領域が存在し、広く議論されてきた経営テーマである。つまり、企業や組織をいかに環境変化に対応した形に変えるか、その変革するプロセスをどうマネジメントすべきかというテーマである。
今回は、前回のレビューのテーマである「ポスト成果主義」をもう一段進化させて、企業や組織の変革自体を議論したいと思う。
「生き物」である企業の存在自体が「変革システム」であるはずである。なぜなら、絶え間ない変化への対応という「変革因子」を持っていない企業は生き残れないからである。
したがって、過去多くの経営手法が論じられてきた。そのすべての方法論が実はこの変革マネジメントのツールであるともいえるのである。そして人事制度もその強力なツールの一つである。
それでは、そこには汎用性の高い、どんな組織にも適用可能な、変革システムは存在するのだろうか。例えば、今はやりのBSC(バランスト・スコア・カード)を導入すれば、変革が実現するのか。答えはもちろんノーである。
もしそんな方法論があるならば、リエンジニアリング、ERP、EVAと、日本の「失われた十年」に次々に導入された経営ツールのおかげで、日本企業の再生がとっくに実現しているはずだからである。ここで議論すべきは、ツールやシステムの次元ではなく、経営そのものの科学(サイエンス)である。
前回のレビューで述べた変革の条件を一部修正して再掲したい。
変革が実現するためには少なくとも以下の5条件を満たす必要がある。
@「変革せねばならぬ」という危機感が共有されているか。
A「なるほど感」のある変革ビジョンが打ち立てられているか。
B変革にコミットし牽引するリーダーシップグループが存在するか。
C実行可能でかつ一貫性のある、一連のアクションプランがあるか。
D最後までやりきる、実行の風土が醸成されているか。
それでは、この5条件さえ満たせば、必ず変革が実現し強い企業に生まれ変わっていけるのか。残念ながら、必要条件ではあるものの、決して変革実現の十分条件を満たしているわけではない。何が足りないのだろうか。
最近の日本企業の再生にかかわっていて、次の三つの観点が十分条件の欠くことのできない構成要素と考えている。
変革を迫られている多くの企業では、原則どおりに、変革の5条件の@、Aを満たす活動からスタートする。その結果として、一応の危機感の共有と、変革の方向は打ち出される。頭では納得できるレベルのものが出来上がる。
しかし、なかなか変革のエネルギーのレベルが上がってこない。トップから見ればまさに「笛吹けど踊らず」の心境に陥る。なぜなのか。
例えば、危機感の説明の力点はどこにあるのか。このままでは、収益力は急激に低下し会社の存続そのものが危ぶまれる、というストーリーになっていないだろうか。そのために、ビジネスモデルをこのように転換すべきというビジョンが展開されていないだろうか。
そもそも、人間は非合理的な存在なのである。頭でわかっても、心に響かなければ、行動の変化率は小さいのである。何が足りないのか。それは、「誉」と呼ぶべき、企業、業務、個人それぞれの存在意義そのものを説明しきれていないためである。
その「誉」の原点は「顧客視点」である。日本の巨大銀行の再生が進まないのは、まさに「誉」がないからである。顧客視点が欠如している企業を再生すること自体に、意味を見出せないことが根っこにあるからである。基本的に人間は感情で動くものであり、本質的な意味を見抜く賢さを持っているのである。
原点に立ち返り、「誉」を再定義すべきである。なぜ企業として存続する意味があるのか、何を実現しようとしているのか、未来志向に基づいて説明しきることが求められている。
変革の条件のBに関しては、リーダーの透明性が重要である。何かを密室で決めて、決定事項だけ公表し実施を迫るのは、最も稚拙な変革プロセスである。「やらされ感」は変革失敗と同意語である。
前項で述べた「誉」も含め、リーダーの役割を担うものは、何を行うかだけではなく、その行動の意図、さらにその意図の基になっている価値観や哲学、信条を徹底的にディスクローズしなければならない。しかも批判にオープンであるべきだ。
そこまでして初めて、価値観を共有する「仲間」が形成されるのである。つまり「笛吹けど踊らず」の原因はトップ自身にあるのである。
今後は一社で実現できる「変革」に限界が見えてくるケースが増える。M&Aまで必要としなくとも、他社との柔軟なアライアンスが鍵になる企業は多い。そのときに、他社からどれだけ「透明感」のある企業であるかは重要な要素である。
金融は競争力の源泉が何らかの「クローズド世界」にあるといわれてきた業界である。その密室性が不健全さを生み出し、顧客視点を失わせた元凶に見える。
今後の企業の生き方は、トップから実務担当者まで、トータルの「徹底ディスクロージャー」が求められているのである。
そして最後の十分条件は、「運」である。いかに合理的な判断を積み重ね、さらに社員の感情の面も入念に考慮しても、最後にはコントロールできない要素が残る。
ただし、徹底ディスクロージャーを進め、「誉」を明確に発信することで、企業に流入する情報は質、量とも拡大するはずである。したがって、チャンスが生まれる確率も高まるはずである。
残るは、チャンスをチャンスとしてとらえられる感受性を高めていくことに尽きる。一つでもチャンスをつかめば、条件のC、Dが一挙に解決する。「元気玉」が出現するからである。
常に企業としての感受性のレベルを検証して、感受性を磨く手立てを繰り返し高度化していくことが求められるのである。
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