【巻頭言】
ペンション・ダイナミクス
年金戦略の再構築

1.
何のための企業年金か
マネジメントは企業年金についてどう考えるべきか

2.
年金経営入門
財務戦略としての年金運用

3.
運用戦略構築のダイナミクス
制度オプションの多様化と資産運用

4.
負債構造に基づく多期間ALM

5.
マネジャー・ストラクチャー
構築ダイナミクス
リスク・バジェティングによる運用効率向上

6.
トータル・リスク・マネジメントによる年金運用の再構築
企業経営の一環としての年金運用

7.
運用機関のアセスメントの視点
相互コミュニケーションを深めるために

8.
運用組織のダイナミズム
アナリスト増員は成績向上の切り札か

9.
確定拠出年金の資産運用
「自己責任」と「投資教育」


.

運用戦略構築のダイナミクス
制度オプションの多様化と資産運用

 

岡田章昌

年金資産運用の原点に立ち返る

 企業年金の資産収益率が過去3年間マイナス・リターンとなった背景は、内外債券が堅調に推移しプラスのリターンとなった一方で、内外株式が大幅なマイナスのリターンとなったことである。このため、過去3年の年金資産運用において焦点となってきたことは、株式の価格変動リスクをいかにマネージするかが中心であった。歴史的に類を見ないマイナス・リターンを経験する中では、株式保有の是非に関する議論からスタートし、株式保有比率の引き下げの結果として債券比率を高め、資産
運用リスクの引き下げを行っているスポンサーも多いのではなかろうか。
 しかし、年金資産運用の原点に立ち返ると、議論の筋道は逆になる。年金資産運用の本質は、保険料を原資とする積立金に一定の利率(予定利率)を上乗せして年金給付を行うことにあり、言い換えると、予定利率の上乗せを保証することを条件に事業主および加入員から資金(年金保険料)を調達し資産運用を行っていることになる。したがって、基金全体の拠出・給付のキャッシュフローに着目すると、年金基金は予定利率という「クーポン」を定期的に支払うような「利付債券」を発行している債務者ととらえることができる。この「クーポン」を支払うための運用資産としてまず候補となるのが債務サイドの特性と最もマッチする国内債券となり、これをベースに国内債券の価格下落リスクの分散や収益源泉の分散のために内外株式や外国株式の組み入れが検討されることになる。

過去3年の経験から学ぶ
金利リスク・マネジメントの重要性

 過去3年のマイナス・リターンの経験からはどうしても株式のマイナス・リターンに焦点が当たりがちであるが、超低金利政策を背景に金利が
一方向に低下する中で、年金資産運用上のベースとなる国内債券のリターンと多くの基金が予定利率としてきた5.5%とのギャップが着実に拡大してきた点を見逃してはならない。
 図1は、各時点における10年国債利回りの過去5年平均値と国内債券インデックス(野村BPI)の過去5年累積収益率の推移を見たものである。これによると、国内債券インデックスの過去5年累積リターンは2000年以降5.5%を下回って推移しており、2003年3月末には2.53%(年率)となっている。厚生年金代行部分の予定利率である5.5%の影響を強く受ける中で、このような国内債券リターンと予定利率のギャップを埋める必要から逆算的にリスクの高い株式に投資せざるをえなかったわけであり、資産運用における許容リスクと予定利率のミスマッチが発生していた可能性は否めない。すなわち、金利リスク・マネジメントの観点から株式保有による追加リスクテイクの是非を検討しつつ予定利率を選択することは制度上の制約もあり行われることはなく、むしろ、金利が一方向に低下する中で、予定利率ありきで株式を保有せざるをえなかったことが事態をさらに悪化させたと考えられる。過去3年間の経験からは、このような資産運用における許容リスクと予定利率のミスマッチがもたらす弊害を回避するために、年金資産運用の原点に立ち返った上で、金利リスク・マネジメントの重要性を改めて認識しておくべきであろう。

図1/10年国債利回りと国内債券収益率の推移

 2003年度に入り、過去3年間の状況とは打って変わり、その反動から、内外株式が大幅なプラスのリターンとなる一方、内外債券が金利上昇による価格下落からリターンが劣後する展開となっている。このような市場環境の変化から金利上昇による債券価格の下落リスクへの意識がスポンサー間で高まりつつあり、過度に債券価格下落リスクを忌避する向きもあるようである。中長期的には金利上昇は現存する運用リターンと予定利率とのミスマッチを緩和する点で歓迎すべき事態であるが、金利上昇過程における債券価格の下落リスクについては他の資産への分散投資によりリスク・ヘッジを行う必要がある。このような市場環境の転換から一転して金利リスクが高まっており、金利リスク・マネジメントを意識した運用戦略の再構築が喫緊の課題となっているといえる(なお、企業財務戦略と年金資産運用をつなぐ金利リスク・マネジメントの重要性については、当特集の佐川「年金経営入門」を参照)。

制度オプションの多様化がもたらす新時代の幕開け

 厚生年金の代行部分を保有する制度上の制約により、多くの基金が予定利率を5.5%に据え置かざるをえなかったことは、いわば、年金基金が「5.5%」という市場金利とは乖離した固定金利の下で年金給付を行うための資金調達を行わざるをえなかったことを意味している。資産運用面においては、96年の運用規制の緩和(5・3・3・2規制の撤廃)や97年の予定利率設定の弾力化等年金規制緩和が図られてから5年以上が経過しており、金融ビッグバンとともに年金運用の自由化は完了しているはずであった。しかし、制度面(負債サイド)の規制緩和の遅れから、資産運用は代行部分の予定利率水準に大きく影響されることになり、これまで受動的に運用戦略を描かざるをえなかった面は否定できない。
 しかし、このような状況は、@代行返上による新企業年金への移行や、Aキャッシュ・バランス・プランの導入等制度オプションの多様化により一変しようとしており、日本の企業年金において、スポンサーが独自の判断により主体的に金利リスクをマネージする時代の幕が開かれようとしている。

代行返上による新企業年金への移行
 第一の代行返上による新企業年金への移行は、代行部分を通じた国の年金政策の影響から解放され、企業が独自の年金戦略に基づきリスク許容度に見合った予定利率の選択を可能とする点で大きな意味を持つであろう。
 97年の予定利率設定の弾力化は、従来は全基金一律に5.5%とされていた予定利率について直近5年間の10年国債の平均利回りを下限に設定することを可能とし、5・3・3・2規制の撤廃と相まって、スポンサーに対して運用面における大きな裁量をもたらすはずであった。また、99年の厚生年金本体の財政再計算において、予定利率が4.0%に引き下げられたことは、代行部分を保有していたとしても基金が予定利率を選択する幅を広げる方向に作用するはずであった。しかし、実際には、94年の財政再計算により計画されていた厚生年金保険料の引き上げが凍結されたことに伴い、2000年の制度改正では厚生年金代行の原資となる免除保険料の引き上げも凍結となった。また、これに伴い、免除保険料計算の前提となる予定利率は5.5%で据え置きとされ、最低責任準備金の算定も99年9月末時点で凍結となっている(99年10月以降については厚生年金本体の運用実績で付利する措置がとられている)。この結果、厚生年金基金の運用責任は、厚生年金本体の運用実績を確保すればよいこととなったが、凍結期間解除後の免除保険料の引き上げや追加負担の公私分担の姿が不透明なことから、多くの厚生年金基金が代行部分の予定利率を5.5%に据え置くことを判断せざるをえなかったわけである。
 現在、2004年の年金制度改革の検討が進められており、本体の予定利率は3.0%程度へ引き下げられる可能性も浮上してきているが、厚生年金本体の改革像が定まらない中で免除保険料の凍結解除については依然として不透明な情勢にある。したがって、代行返上による新企業年金への移行は、資産規模の縮小により運用機関の採用等運用戦略の選択肢が狭まる点でデメリットといえるが、一方で、国の年金政策の動向に左右されることなく予定利率の選択から運用戦略を策定することが可能となる点ではデメリットを上回るメリットをもたらす可能性を秘めている。しかし、独自に予定利率を選択するという点では「国が設定しているから」というような従来の日本的な横並び意識は通用せず、リスク許容度等自己のリスク選好を勘案しつつ金利(予定利率)を選択するディシプリンが求められることになる。さらに金利選択が実効を伴うためには、より高度な金利リスク・マネジメントが必要となってくることを視野に入れておくべきであろう。また、代行継続を判断している基金にとっても、許容リスクに見合った予定利率を選択していくことは、検討すべき課題であると考えられる。

キャッシュ・バランス・プランの導入
 第二のキャッシュ・バランス・プラン(以下、CBプラン)の導入は、金利リスク・マネジメントの枠組みに「予定利率中心」から「市場金利中心」へとコペルニクス的転換をもたらす制度オプションと言えるものである。
 前述のとおり、これまでの資産運用面における規制緩和により、予定利率の選択については下限の制約や代行部分の制約はあるにしても自由化が着実に進められてきたが、これは、一定の利率を保証する形で資金(保険料)を調達する「固定金利」の枠内での自由化であった。これに対して、CBプランは、給付額(いわゆる元本)の評価を市場金利の変動にさらすことにより、保証利率を市場金利に連動する形で変動させようとするものであり、年金運用の負債コスト(保証利回り)を「固定金利」から「変動金利」へ転換することを可能とする本格的な金利自由化である。

図2/金利リスク・マネジメントのコペルニクス的転換

 CBプランは、従来の確定給付型プラン(以下、DBプラン)が給付時に給付額が確定する「後払い」であったのに対し、拠出時に給付額が確定する「前払い」の制度であり、人事戦略上は確定拠出型と同等の効果が期待される。しかし、資産運用上は、保険料を原資とする積立金に一定の利率(予定利率)を上乗せして年金給付を行う点で従来の確定給付型と全く変わりがなく、このことが「混合型年金」と言われるゆえんである。
 それでは、「変動金利」としての特性を引き出している味噌は何かというと、「前払い」として加入員の仮想的な個人勘定に積み立てられる「仮想積立残高」が「再評価率」という市場金利に連動する指標(例えば、10年国債の応募者利回りの過去5年平均等)を基に変動することにある。財政再計算時の計画段階においては、資産の伸びが「予定利率」を設定した上で見込まれるのと同様に、負債の伸びは「予定再評価率」を設定した上で見込まれることになる。実際の「仮想積立残高」の計算に用いられる「実績再評価率」が「予定再評価率」と乖離することは不可避であり、市場金利の動向に応じて、財政計算上、
 @ 「実績再評価率」が「予定再評価率」を上回る場合には、この差額
   である「実績再評価率−予定再評価率」を予定利率に上乗せして
   保証する必要が生じ、逆に、
 A 「実績再評価率」が「予定再評価率」を下回る場合には、この差額
   である「実績再評価率−予定再評価率」分だけ保証すべき利率が
   予定利率より少なくて済むことになる。
 「予定利率」と「予定再評価率」との差は財政計算上手当てすべきものであるため、CBプランにおける資産運用上の保証利回りは「実績再評価率」ということになる。
 したがって、資産収益率が市場金利の影響を受けることは言うまでもないが、CBプランの導入により負債コスト(保証利回り)も市場金利に依存して変動するようになるわけである。従来のDBプランにおける「予定利率」を中心とするアプローチでは、固定された負債に対する資産の振れをマネージすることが課題とされてきたが、CBプランでは「市場金利」を中心に資産と負債の変動を同時にマネージすることにより、金利変動に対して資産と負債の差である「サープラス」を安定化させることが金利リスク・マネジメントの課題となる。
 以上より、CBプランは、金利リスク・マネジメントのあり方に抜本的な変革をもたらすインパクトを有しており、制度オプションとしての有用性は高いと考えられる。ただし、CBプランにおいては、負債の金利感応度をどの程度高めるかについては、再評価率としてどのような金利指標を採用するかに大きく依存しており(※)、スポンサーは自己の判断により金利を選択し運用戦略を構築する必要に迫られることになる。

CBプランは魔法の杖?

 このように市場金利の変動に対して資産と負債の変動をマネージすることにより、資産と負債の差である「サープラス」を安定化させることが可能となる点で、CBプランへの期待度は次第に高まりつつあり、導入を検討しているスポンサーも多いことであろう。果たして金利リスク・マネジメントにおいてCBプランは魔法の杖となりうるであろうか。
 CBプランへの期待が高まっている背景として、資産と負債の金利感応度をある程度同水準にコントロールできれば、金利変動に対して資産と負債の動きが相殺し合うことによりサープラスを安定化させることが可能となることが挙げられる。究極的な姿としては(現実にはとうてい不可能であるが)、資産と負債の金利感応度を完全に一致させることができれば、サープラスの変動リスクをゼロにすることもありうることになる。
 例えば、単純化のために資産と負債の時価を100、予定利率と予定再評価率を3%とするケースを考えてみたい。資産と負債のデュレーション(金利感応度)が5(年)で金利が1%上昇した際には、資産と負債はそれぞれ5%目減りすることになり、資産と負債の時価は95となるため、サープラスはゼロとなる。また、実績資産収益率および実績予定評価率はそれぞれ▲5%となり、資産サイドで予定利率と実績資産収益率との差異が▲8%となる一方で、負債サイドで予定再評価率と実績再評価率の差異が▲8%生じるため、これらが相殺し合うことにより、金利リスクをへッジすることが可能となる。
 逆に、金利が1%低下した際には資産と負債がそれぞれ5%増加することになり、資産と負債の時価は105となるため、同様にサープラスはゼロとなる。また、実績資産収益率および実績予定評価率はそれぞれ+5%となり、資産サイドで予定利率と実績資産収益率との差異が+2%となる一方で、負債サイドで予定再評価率と実績再評価率の差異が+2%生じるため、これらが相殺し合うことにより、同様に金利リスクをへッジすることが可能となる。
 このように完全に相殺することは実務上不可能であるが、資産と負債の金利感応度のコントロールにある程度成功すれば、サープラスを安定化させることが期待できるのである。
 上記のような例を見ると「CBプランは魔法の杖ではないか!」ということになるが、実際にはそう簡単ではない。
 CBプランのための運用戦略として、債券投資により資産と負債のデュレーション・マッチングを行うこと(いわゆる「イミュナイゼーション戦略」)があるが、実際には、資産サイドの収益率が市場金利変動に対する「債券価格変動」(キャピタル・ゲイン/ロス)の影響を受けることにより、問題が複雑になっている。
 簡単な例として、債券に対する資産配分を100%とするケースについて考えてみると、金利が上昇する場合には、@資産サイドではキャピタル・ロスが発生することにより資産の時価が目減りするのに対して、A負債サイドでは再評価率が上昇することにより負債の時価が増加することになり、負債サイドが市場金利の影響を受けないDBプランの場合よりもサープラスのマイナス幅が増幅されることになる。
 逆に、金利が低下する場合には、@資産サイドではキャピタル・ゲインが発生することにより資産の時価が増加するのに対して、A負債サイドでは再評価率が低下することにより負債の時価が減少するため、DBプランの場合よりもサープラスのプラス幅が増幅されることになる。
 このように債券のみでマッチングを行うということは事実上不可能であり、株式等他の投資対象への分散投資を行いつつ資産と負債の金利感応度をきめ細かくコントロールしていく必要があり、CBプランは魔法の杖とはなりえない。
 さらに、上の例では、「資産=負債」というフル・ファンディングの状況を想定していたが、実際には、ファンディング比率は時々刻々と変化するものである。この点からも、運用戦略をセットしたら終わりということではなく、定期的な資産と負債の状況をフォローしつつきめ細かく金利リスクをマネージしていく必要がある。
 このようなリスク・マネジメントの難しさは、オルタナティブ運用における代表的な戦略であるロング・ショート戦略やマーケット・ニュートラル戦略になぞらえて考えるとイメージしやすい。これらの戦略では、買いポジション(ロング・ポジション)と売りポジション(ショート・ポジション)を総合的に管理することによりポジション・トータルでの市場感応度を中立化するように戦略を策定し、市場変動の影響を受けないようなリスク/リターン特性を創出することにその特徴がある。ただし、このような戦略で安定的にリターンを獲得できるか否かはマネジャーの運用スキルにかかっており、万が一ポジション構築に失敗すると買い・売りの両サイド損失をこうむるような難しい運用である。
 CBプランにおける金利リスク・マネジメントも同様の難しさを有しており、CBプランを検討するにあたっては、スポンサーのリスク・マネジメント・スキルが決定的に重要になってくることを視野に入れておくべきであろう。

DBプランも本質は同じ

 DBプランについても予定利率ありきの運用戦略から金利を主体的に選択する運用戦略への転換を余儀なくされるであろう。過去3年のマイナス・リターンを経験する中で、予定利率ありきの運用戦略が事態をさらに悪化させてきたことは先に述べたとおりである。このような教訓を将来に活かすとすれば、追加拠出もしくは給付引き下げ等痛みを伴うことは覚悟しなければならないが、許容リスクに見合った水準まで予定利率を引き下げ、資産と負債の差である「サープラス」を安定的にマネージし、年金財政の健全性を高めていくことが必要といえる。
 特に、許容リスクの低下を反映し予定利率を引き下げる際には、今後株式等リスクの高い資産でリスクを追加し、リターンを補強する必要がなくなるため、債券比率が高まることになる。一方、今年度に入り金利上昇リスクが高まっており、デュレーションの短期化など債券投資戦略の枠内での対応も検討するに値する。しかし、一方向の金利低下局面を長期的に経験した後の大幅な金利反発の中では債券投資戦略の枠内での対応には限界があり、株式等他の投資対象の組み入れによりリスク分散を図りつつ資産の金利感応度をコントロールしていくことが重要になっている。
 また、すでに導入されているCBプランの多くは、市場金利が低水準にあることから、再評価率に下限を設定することなく制度移行した場合には大幅な追加拠出もしくは大幅な給付削減を伴うことになるため、再評価率に下限を設定して運用をスタートさせている。このようなケースでは、再評価率が下限金利に到達するまでの期間は、その実態は予定利率を引き下げたDBプランとなる。もちろん、従来に比べればリスク・マネジメントの高度化が必要となるが、DBプランではマネージすべき対象は資産サイドのリスクのみであり、CBプランに比べればそのハードルは低い。このような再評価率が下限に達するまでの期間を本格的なCBプラン移行への猶予期間として有効に活用し、まずDBプランにおいてサープラス・リスク・マネジメントの経験を積んでいくことは、CBプランで必要となる高度な運用体制に円滑に移行していく上で重要なプロセスと考える。

求められるアプローチの転換―「ダイナミックALM」

 以上、制度オプションの多様化により金利を主体的に選択する運用戦略の構築が可能となり、このような運用戦略を実践していくためには金利リスク・マネジメントのあり方を高度化していく必要があるが、これに伴い、運用戦略構築のアプローチも抜本的な転換に迫られることになることを最後に述べる。
 従来のアプローチでは、与えられた予定利率に運用報酬フィーを上乗せしたリターンをターゲット・リターンとし、最適化アプローチにより最もリスクが低く効率性が高い資産配分を有効フロンティア上から見つけ出し、その資産配分についてALMシミュレーションを実施し許容リスクとマッチしているかを確認するような方法がとられてきた。
 しかし、金利を主体的に選択していくためには各基金固有の許容リスクからスタートする必要があり、従来の最適化アプローチ(いわゆる「バランスシート型ALM」も含む)では計画期間内の各時点におけるリスクの状況を把握することができないため対応することができない。このような新たな戦略構築を実現可能にする実践的なアプローチとして、弊社では、想定される金利水準(金利パス)に対して資産および負債の変動をダイナミックにシミュレーションした上で、計画期間のサープラス・リスクをダイナミックに把握し、許容リスクに対して最も適応力の高い資産配分候補を模索していくアプローチ(「ダイナミックALM」)を採用している(具体的な内容については、当特集の川辺「負債構造に基づく多期間ALM」を参照)。

終わりに

 日本における年金資産運用は過去3年の最悪期をようやく脱し、制度オプションの多様化を背景に大きな転換点を迎えようとしている。特に、CBプランの導入がもたらす金利リスク・マネジメントの高度化については、先に導入が進んでいる米国におけるCBプランの資産運用が株式相場の好調を背景にファンディングに余裕がある中で行われてきたのに対し、日本では金利水準が低く、かつ、ファンディングが厳しい状況での運営が求められており、世界の年金資産運用におけるフロンティアに直面していると言っても過言ではない。今、日本発で年金運用のフロンティアを切り拓く新たな挑戦が始まろうとしている。
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(※)法令では、@一定率、A国債利回り、B一定率と国債利回りの組み合わせ、C一定率と国債利回り
   に上限または下限を定めたもの、と定められている。

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●岡田章昌 おかだあきまさ/一橋大学経済学部卒業。千葉大学大学院社会科学研究科修士課程修了(経済学修士)。日本生命保険相互会社にて円金利資産運用業務、大蔵省財政金融研究所(現財務省総合政策研究所)にて税制・年金制度に関する政策研究、ニッセイ基礎研究所にてマクロ経済調査・金利為替予測業務に従事。当社入社後は、資産運用コンサルティングに従事。


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