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【巻頭言】 |
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【巻頭言】
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ワトソンワイアット株式会社 |
今号のワトソンワイアットレビューでは、2004年の第一弾として、「成長」を取り上げる。多くの日本企業が、リストラや再生という過去の清算から抜け出して、やっと再び「成長」を思い描けるような状況に近づきつつあると判断したからである。
日本企業が今後目指すべき成長とはどのようなものだろうか。少なくとも、バブル期のような単なる「量の拡大」ではないはずである。このときは明らかに多くの日本企業が急激な「膨張」と呼ぶべき状況に陥り、崩壊後その反動に長期間苦しめられた。本来の「成長」ではなかったのである。
また、ITバブルのときのような「将来期待への熱狂」をベースにした「お祭り騒ぎ」でもないはずである。つまり、将来への何らかの「準備」を伴う、着実な変化を遂げている姿が新しい「成長」の姿に違いない。
そのためには、意味のある「変化の方向」が定められており、その「変化への対応継続」のメカニズムが築かれていることが必要であろう。この二つの要件から、日本企業にとっての新しい成長のシルエットを描いてみよう。
それでは、今からの日本企業にとって「意味」のある変化の方向とは何か。それには、三つの条件がある。第一に、その方向は「歴史観と地球観」に基づいている必要がある。
12年ほど前にトヨタ自動車の経営企画スタッフと討議したことがある。そのときにトヨタのスタッフから提起された課題を今も鮮明に記憶している。
「2010年頃に中国とインドに本格的なモータリゼーションの波が訪れる。地球人口の約40%を占める両国に今のエンジン、つまり内燃機関の延長線上の動力源を持った車が走り回れば、石油資源も地球環境ももたない。」
「したがって、歴史の必然として、その5年前、つまり2005年頃までには、画期的なエンジンが開発されていなければならない。ハイブリッドや燃料電池といったレベルのイノベーションではないはずだ。しかし、今のトヨタにはその種さえも存在しない。そのレベルのイノベーションが起きても、いかにトヨタが競争力を維持できるか。この用意をすることが最重要の経営課題である。」
この歴史観、地球観の次元で「将来への備え」に常時取り組んでいる姿が「新成長主義」の第一の条件である。
第二の条件が「ソフトマネー重視」である。世の中には「ハードマネー」と「ソフトマネー」の二つが存在すると考えられる(※1)。バブル崩壊後の日本企業改革では、米国型統治モデルが浸透し、株主重視、ROE重視やEVA基準経営などの流れが定着した。
世界でも、これらのハードマネー基準の「成長」がいまだ評価の主流である。しかし、第一の条件で述べた歴史観に立った地球規模の視点は、このハードマネーの世界につながってこない。この高みの視点は将来の変化の方向にとっては明らかに短期のハードマネーよりも重い。
したがって、新成長主義は社会からの「信用」「尊敬」「ブランド」といった、ソフトマネーの資本形成を重視することになる。つまり、いくらハードマネーが拡大しても、一向にソフトマネーの蓄積が進まないのであれば、成長とはいえないのである。
そして最後の条件が、人材の前向きの変化が伴う企業成長かどうかである。付加価値源泉が設備やビジネスモデルのようなハード資産から、人材の智恵という知的資産へと急速にシフトしている。
つまり、新成長主義では、社員の疲弊の度合いが高まっていく中で企業が成長を遂げるということは、もはやありえない。
それではもう一方の論点である、「変化への対応継続」メカニズム」の構成要素について考えてみよう。新成長主義が求めているのは、一種の二律背反的な要素や特性を高い品質でいかに並存させるかである。
例えば、成長の基盤として「今」のビジネスを磨き続ける必要がある。一方で今を否定した、将来成長の「賭け」や一種の「遊び」を打っておく必要がある。どちらも同様に重要で、それぞれが徹底したレベルで継続できなければ、どこかで「新成長」の道から外れてしまう。
また、いくらソフトマネー重視といっても、現実にハードマネーが枯渇する状況に陥っては、いくら地球規模で定めたビジョンがすばらしくても、永遠に夢は実現しない。
この徹底的なハードとソフト、タイトとルース、鳥瞰的視点と短期の現実的なリアリティ、これらの対極の要素をいかに高い次元でマネジメントできるのかが問われることになる。
人間は元来このような二面性を持っているのである。生き物である企業も同様にこの二面性を意図的に作り出し、徹底して高いレベルで並存させていくことが求められていく。
この世で最も魅力的な存在が神と悪魔の両面を兼ね備えたものであるように、対極の要素を併せ持つ魅力的な企業が新成長主義の主役となるのではないだろうか。
このレビューの中で、どれだけ魅力的な未来型成長の姿を描き出せるであろうか。読者の皆さまに、何か一つのヒントでも提供できれば我々にとって望外の喜びである。
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(※1)ここでは、キャッシュそのものを「ハードマネー」、有形無形を問わず、後でキャッシュを生み出す
ような価値のあるものを「ソフトマネー」と定義する。