【巻頭言】
常識再考
常識を良識に進化させる

1.
プロセス責任を果たす
リスクに対するマネジメントとガバナンス
   
2.
ゼロからの年金ALM
年金リスク再考

3.
総合型基金における
政策アセットミックスの常識再考
 
4.
アセットアロケーション戦略の常識再考
最適化アプローチは最適か

5.
サッカーとマネジャー・ストラクチャー
トルシエvs.ジーコ
   
6.
ヘッジファンドのアルファ再考
スキルによるアルファとベータを区別する

7.
間違いだらけのコンサルタント選び
良いコンサルタントの常識再考

【基礎講座 1】
年金スポンサー自身による定性評価
運用報告会の効果的利用法を模索する

【基礎講座 2】
過去の運用パフォーマンスから何がわかるか
定量分析講座―その意義と限界

【基礎講座 3】
オルタナティブ・モニタリング
ヘッジファンド・オブ・ファンズ(HFOF)モニタリング再考

.

間違いだらけのコンサルタント選び
良いコンサルタントの常識再考
 

 

大海 太郎

 今、「話し方」が大流行している。「話し方」についての本が何百万部と売れているそうである。確かに、人と話していると「この人と話すといつも『へー』と感心させられる」とか「あの人の言うことはそれらしいんだけど、どうもよくわからない」というように、各人各様の話し振りや特徴がある。そして、それによってその人の印象はもちろんのこと、その人に対する評価や場合によってはその人の属する会社や組織に対する評価まで大きく左右される。当然のことながら、これはコンサルタントにもそのまま当てはまる。それでは、どのような「話し方」というよりは「話」をしてくれるコンサルタントが望ましいのであろうか。ここでは年金に対する資産運用コンサルタントを念頭に、どのようなコンサルタントを選ぶべきか、あるいは現在採用しているコンサルタントをどう評価すればいいのか、について考えてみたい。

コンサルタントの4分類

 新規採用に関するプレゼンであれ、すでに採用しているコンサルタントからの報告や提案であれ、コンサルタントと話した場合にその内容と説明の仕方により、図のように4通りにコンサルタントを分類することができる。A は説明がわかりやすいけれど話の内容が低レベル、B は難しいことを話しているが実は内容があまりない、C は高度な内容をそのまま難しく説明している、そして D は高度な内容だけれどそれをわかりやすく説明してくれるコンサルタント、である。皆さんも多かれ少なかれ、「あのときにプレゼンに来た人は B だな」とか「今、うちを担当しているコンサルタントは D だ」というように思い当たる節があるのではないだろうか。それでは果たしてどのタイプのコンサルタントが望ましいのであろうか。

図/コンサルタントの分類


 A は少なくとも話がわかりやすいので世間話をするのには悪くないのかもしれないが、最先端の理論や豊富な知識・経験に基づく専門的なアドバイスを求めるのにはふさわしくない。言うまでもないが、話の内容や提案の中身のレベルが低いのでは、そもそもお金を払うに値しない。
 B は注意を要する。専門用語を散りばめたり、難しいことを言ったりしているので、「さすがは専門家」「何か、高等な話をしてくれている(ようだ)」と思ってしまいがちだが、騙されてはいけない。中身がないものをそれなりに見せるという点では、供給サイド(コンサルタント側)としてはそれなりのスキルと言えるのかもしれないが、需要サイド(顧客側)としては一番避けるべきタイプである。なぜなら、中身がないことに気づくのが困難な分、採用してしまってから、一定の時間が経過し、フラストレーションが十分に溜まった後で真実がわかってくることから、問題が大きくそして長くなりがちである。
 C は、中身があるものを提供するという意味では、外部のプロフェッショナルとして活用する意義はある。もしかしたら、会社のレベルは高いが、たまたま説明に来たコンサルタントあるいは担当コンサルタントに問題があるということかもしれない。いずれにせよ、ベストではなくベターな選択ということになろう。
 D が最も望ましいタイプのコンサルタントである。提供する内容のクオリティが高いことは最低限の必要条件として、それをいかにわかりやすく、そして個別の顧客の状況に合った形で提供してくれるかによって十分条件を満たしているかどうか決まるのである。
 ここまでの説明でおわかりのように、最も望ましいコンサルタントは D のタイプであり、C までは採用に値する。害が小さいであろうという点でその次 A であり、最も避けるべきタイプが B である。しかし、往々にして引っかかってしまうのもこの B タイプというところがやっかいなのである。

コンサルタントの条件:「内容」と「説明」

 それでは、この二つの要素:内容と説明は何を意味しているのであろうか。そしてそれぞれについてコンサルタントが満たしているべき要件とは何なのであろうか。
 まず内容であるが、これは会社が有しているコンサルティングのベース部分に相当する。もちろん、個々の担当コンサルタントによって各自が有している知識や経験、理解の深さに差はあるだろうが、まずはその会社のコンサルタントが共有しているはずの土台部分に相当する知識、経験、考え方が極めて重要である。各コンサルタントが共通に利用するプラットフォームとして会社としての考え方その他のベースがあるはずであり、コンサルタントによって運用に関する重要な考え方が異なっていては会社として成り立たない。あるコンサルタントはALMを実施する際には債務を考慮することが大事だと言っている一方で、同じ会社の別のコンサルタントはALMに際しては資産サイドだけ考えればいいと言っているようなケースが仮にあった場合には、会社としてコンサルティング・サービスを提供しているというよりは個人でコンサルティングしているというべきである。
 次に説明の仕方であるが、これはコンサルタント個人の資質に負う部分が大きい。内容のクオリティについては高いほうがもちろん望ましいが、説明についてはわかりやすいことが重要である。Bのタイプの解説で述べた通り、話が難しかったり聞き慣れない専門用語をまくしたてられると何となくすごいと思ってしまったり、ありがたがってしまったりすることがあるかもしれないが、それは間違いである。どんなに高尚な内容でも理解できなければ、意味がない。そしてわかりやすく説明できるためには、まずはコンサルタントのほうが顧客の話をよく聞いて、顧客の悩みは何か、問題はどこにあるのかを把握した上で、顧客に理解のできる言葉で実行可能な解決策を提案していくことが必要不可欠なのである。
 次章以降でこの「内容」と「説明」に関してコンサルティング会社と個別のコンサルタントにどういったことを求めるべきかについてもう少し詳しく考えてみたい。

「内容」:コンサルティング会社に求めるべき要件

 コンサルティング会社に何を求めるべきかは、もちろん顧客側の目的によって異なってくる。そして、コンサルタントを採用する場合には、何のために採用するかをあらかじめはっきりさせておくということは重要な原則である。しかしここではあえて、より一般的であろう「自分たちだけの年金運営に不安が残るので、運営全般をサポートして年金運営のレベルアップを助けてくれるようなコンサルタントを採用したい」という状況を想定している。この場合、コンサルティング会社に求めるべき全般的な条件として、幅広さ、深さ、顧客側からの視点、の三つを挙げたい。
 幅広さというのは、情報や経験、システム、ツールに関してサービスやアドバイスを提供できる範囲である。情報というのは、典型的には運用機関のデータベースであり、市場環境や新商品、規制、制度等についての様々な知識が含まれる。経験については、年金業界における過去の経験や多様な年金におけるコンサルティングの実績である。これらについては言うまでもなく、どれだけ幅広く情報を有しているか、豊富な経験があるか、が肝心である。運用機関の情報にしても、対象は国内のみかそれとも日本に進出してない海外の運用機関も含まれるのか、資産は伝統資産だけかあるいはいわゆるオルタナティブ資産もカバーされるか、によって差が出てくる。また、運用コンサルタントに直接、制度についてアドバイスを求めることはなかったとしても、制度に関してどれだけ知識や理解があるかによって運用面のアドバイスが異なってくることもある。システムやツールは、例えばパフォーマンス分析のシステムや、リスク分析のためのツールを指す。これらについても単純なパフォーマンスの算出にとどまらず、顧客からの要望に対してリスク・バジェッティングやスタイル分析等、幅広く答えられるに越したことはない。
 次の深さとは、会社としての運用に関する理論や考え方に関する深さである。運用機関に対する評価というのも単純な過去の実績やユニバース比較であれば深さよりも対象の広さが問題であろうが、定性評価ということであればむしろ深さが重要である。理論や考え方に関しては、必ずその裏にある理由づけ、何でそう考えるのか、どうしてそのような提案に結びつくのかということが常に明確になっていなくてはならない。例えば、運用機関の定性評価についてはレーティングだけをもらって利用するというやり方がないわけではないだろうが、主観的なものであるだけにどのような事実をもとにいかに判断して最終的なレーティングに至ったかということを理解し、納得することが定性評価を有効に使いこなす上では重要である。さらに言えば、そもそも運用機関を評価するにあたって定量評価と定性評価をどう位置づけるのかという考え方とその理由に納得して初めてそのコンサルティング会社に運用機関を評価してもらうべきであろう。
 最後の「顧客側からの視点」であるが、ある意味すべてのサービスに関連してくることから影響が大きいと言える。これはコンサルティングを提供する際にどのような立場からそれがなされるのかということである。すなわち、自社のベースである考え方を利用して、どの顧客にも同じ提案を提出するいわゆる商品の「プッシュ」型なのか、それとも顧客の立場に立ってそれぞれにとってベストだと思われる個別の解決策を提案する「プル」型なのか、である。さらに重要なのは、これらの提案が偏りのない立場からされているかということである。もし、このコンサルティング会社に特別な関係がある運用機関が存在したり、別の部門では自ら金融商品を提供していたりする場合に果たしてプロフェッショナルとして中立的な立場からのアドバイスが本当になされるだろうか。それでも中立性が保たれているケースはあるのだろうが、やはり「李下に冠を正さず」である。このあたりの利益相反の問題に関しては、米国ではより厳格さを求める傾向が強まっており、今後は日本でも同様の状況になっていくであろう。
 以上をまとめると、コンサルティング会社に求める「内容」とは幅広さ、深さ、そして何よりも顧客の立場から中立性を持って物事を見る顧客側からの視点である。

「説明」:担当コンサルタントに求めるべき要件

 前章で述べた「内容」をいかに説明してくれるかという点については、個々のコンサルタントに左右される部分が大きい。ここまで述べてきたことと矛盾するようであるが、個別の顧客に提示される提案や解決策は顧客ごとに異なっているはずである。それぞれの年金の置かれている状況は千差万別であるから、実際のコンサルティングにあたって会社共通の考え方や知識、経験を活用しても、具体的な課題の解決策はそれぞれ違ってくるべきなのである。効率的にスタイルの分散を図るべきだという考え方に変わりはなくても、資産規模5000億円の年金に提案するマネジャー・ストラクチャーと50億円の年金への提案が同じほうが不自然である。そして、同じ考え方なのになぜ隣の年金とは異なる提案がベストなのかということをきちんと説明してくれることが担当コンサルタントには求められる。したがって、ここで「説明」と言っていることは文書や口頭によるコミュニケーションにとどまらず、会社の持つ「内容」を適用して個別の状況に対応した解決策を考え、提供してくれる能力全般を指している。そのような能力の具体的要素とは、1 )話を聞く、2 )解決策を考える、3 )説明する、4 )実行する、能力に加えて最後に、5 )顧客との相性、が該当する。
 最初の「話を聞く」ことは、顧客の置かれている特有の状況をまず理解する上で不可欠な要素である。「プッシュ」型のコンサルティングをしている会社のコンサルタントにとっては不要なことかもしれないが、そうでなければ新規の提案に際してあるいはコンサルティング開始以降、顧客の話を聞く姿勢を見せないコンサルタントについてはその資質を疑うべきである。
 顧客の状況を理解したら「解決策を考える」ことになるが、ここでは担当コンサルタントの、原則を創造的に適用する柔軟性と物事を深く考える資質が問われる。提示される解決策や提案について、その背景や理由が考え抜かれているかどうかが鍵となる。
 そして、「説明する」という具体的なコミュニケーションになるわけだが、ここまでにいかに顧客に対して個別に対応してきたかによって伝える内容が顧客に即しているかどうか差がついているはずである。有能なコンサルタントであれば、顧客に即した内容を準備した上で顧客の理解度に応じてわかりやすくコミュニケーションを図ってくれるはずである。もし、コンサルタントの言うことが理解できないのであれば、それは顧客の問題ではなく、コンサルタントの問題なのである。
 その次の「実行する」については、コンサルタントが主となることはあまりないかもしれないが、運用方針の見直しといったことを実際に進めていく場合にプロセスやスケジュールの設定や様々な委員会での説明、進行、といったことにどこまで寄与できるかということは重要な要素であろう。ここでも、コンサルタントが個別の基金の状況をどこまで理解し、対応できるかが重要となってくる。
 最後の「相性」についてはあまり解説のしようがないが、人と人が関わるときにはどうしても生じるものであり、客観的に見て申し分ないのだがどうしても相性が、という場合があるのは事実である。
 以上、担当コンサルタントに求める要件について述べてきたが、共通して言えることは、いかに顧客に対して個別に対応してくれるか、がポイントだということである。

それでは、そのようなコンサルタントをどうやって選ぶのか

 ここまで、良いコンサルタントとはかくあるべし、ということについて述べてきたが、それではそのようなコンサルタントはどのように選ぶべきなのであろうか。
 結論から言えば、極めて難しいということになる。実際に採用してある程度の期間、つきあえばそれなりに判断はできるであろうが、採用にあたって見極めるのは難しそうである。そうだとすると、まさにこれまで採用してきた顧客がどう評価しているかというのは有力な判断材料であろう。定量的な指標としては、既存のリテーナー顧客がどれぐらいの期間、契約を継続しているのかというのは顧客の満足度の目安になろう。あるいは実際に既存の年金顧客に話を聞ければより具体的に評価の内容がわかって望ましい。話を聞くことが無理な場合には、実際の報告書を見せてもらったり、特定の課題に関しての考えを聞いたりすることにより判断せざるをえないかもしれない。また、採用時のプレゼンテーション等の機会にコンサルタントが「自分の言葉」で説明してくれるかどうかということはその後もわかりやすく「説明」してくれるかどうかを占う上で重要なポイントである。
 いずれにしても、コンサルティング会社活用の目的に関して明確に特定できている場合を除いては、ある程度の期間にわたって年金運営全般をサポートしてもらうことになるので、手間と暇を惜しむことなく、ここまでに述べた要件を満たしているコンサルタントをぜひ探していただきたい。

トップへ戻る ▲

●大海太郎 おおがいたろう/東京大学経済学部卒業。ノースウェスタン大学にて経営学修士(MBA)取得。ファイナンス専攻。日本興業銀行にて、資産運用(外国株式担当)、為替ディーリング業務に従事した後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにおいて本邦大手企業、多国籍企業に対しての経営コンサルティングに携わる。ワトソンワイアット株式会社入社後は資産運用コンサルティングに従事。