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【Watson Wyatt Solutions and Technologies】
報酬サーベイの20年
ハイテク業界報酬サーベイを中心に

ワトソンワイアット株式会社 データサービス

 ワトソンワイアットは、1987年より、ハイテク業界の報酬調査を実施している。本年21回目のラウンドを迎えるにあたり、報酬調査20年間の軌跡を振り返ってみたい。

基準職位に基づく報酬サーベイとは

 基準職位(以下「ベンチマークジョブ」と呼ぶ)に基づく報酬調査について、簡単に説明しておく。
 我が国における賃金データは、政府による賃金センサス(厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」)や、モデル給与に基づく調査などが発行されている。これらは、いずれも「年齢」「役職」に基づいており、業種や企業規模の区分けで、基本的には一つの代表値が提供される(例:製造業、大卒、35〜39歳、所定内給与額=386.3千円)。
 これに対して、弊社「ハイテク業界報酬サーベイ」のようなベンチマークジョブに基づくサーベイでは、ある「仕事」をしている人が、世の中でどれくらいの報酬を得ているのかを調べる。
 これを行うために「仮想的な会社の組織図」を用意し、その会社の中に存在しうる「職務」を定義する。「ベンチマークジョブ」とは、このような仮想的な会社組織の、仮想的な職務のことである。
 調査に参加する企業は、自社の従業員一人ひとりを、この仮想的な組織図のどこに当てはめるかを決め、その従業員の給与と、仮想的な組織での職務を紐付け、弊社に提出していただく。
 例えばマーケティングの上級職務である「シニアプロダクトマネジャー」というベンチマークジョブについて、複数の会社でその職務に就いている人(「実在者」という)の給与データが弊社に集積される。弊社はこれを統計処理し、例として挙げた「シニアプロダクトマネジャー」の仕事をしている人が、世間相場どれくらいの水準の給与を得ているのか、を参加企業にレポートとして提供する。
 弊社のハイテク業界報酬サーベイでは、業界に独特の職務、および、どの会社にも存在しうる職務について、計268のベンチマークジョブを調査している。

 ベンチマークジョブに基づく報酬調査に参加すると、特定の職務が世の中の同業企業で、どれくらいの水準の給与を得ているのかを詳細に知ることができる。それぞれのベンチマークジョブについて、実在者の年齢や経験レベル、年間の保証報酬額、変動する報酬などにつき、平均、中位、四分位などの統計値が提供される。
 日本ではあまり意識されない概念かもしれないが、米国を中心に「同じ内容の仕事なら、(業績によって変動しない部分は)仮に会社が異なっても、同じ賃金になるべき」という考え方があり、これを外部公正external equityの原則という。
外部公正の原則を担保するために、米国や西欧社会では、ベンチマークジョブに基づく報酬調査が広く実施されており、リクルーティングや毎年の給与改訂に活用されている。

 ワトソンワイアットは1987年にベンチマークジョブに基づく報酬調査を開始し、今年21回目のラウンドを迎える。調査の性格上、ご参加いただいている企業は海外に本拠地を置く企業が多いが、別段外資系に制限しているわけではない。人材の流動化が加速し、転職という形で給与が見直される機会が増えるにつれ、ベンチマークジョブに基づく報酬調査の重要性は深まってゆくと考えている。20年間にわたり、弊社の調査にご参加いただき、様々なご指導やご支援をいただいた皆様には、この場を借りて心からお礼を申し上げます。

図1/初回のベンチマークジョブ

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ハイテク業界報酬サーベイ 1987−2006

 手元に1987年に実施された第1回ハイテク業界報酬サーベイのレポートがある。第1回の参加企業9社のうち、現在も存在する企業は3社、現存しない6社には懐かしい名前も含まれており、20年間の歳月を感じさせる。
 「ベンチマークジョブに基づく調査」という報酬調査の方法論はこの20年間を通して変わっていないが、初回のベンチマークジョブは、僅か17(図1)。これに対して、2006年度サーベイで利用したベンチマークジョブは約260であった。ベンチマークの数がこれほど増えたのは、組織図上の職種が増え、さらに、レベル設定が細かく設定されたことによる。
 20年にわたって業界と時代の要請に応え続けてきた結果、1987年のベンチマークジョブと現在使用しているベンチマークジョブは別物といってもよいくらいの違いが出来てしまった。その中で比較可能と思われる三つのポジションとして、企業のトップである「ゼネラルマネジャー」、営業部門のトップである「セールスディレクター」、技術部門のトップである「テクニカルディレクター」について、総報酬額の20年間にわたる動きを見てみよう。
 図2は、これら三つの職務について、「総報酬額」(固定的に支払われるすべての現金報酬+個人・会社業績により変動する現金賞与)の変動を示している。

図2/総報酬額推移 1987-2006

 図2のグラフを読んでいただくにあたり、いくつかの注意点を述べる。まず、グラフは、1987年の「ゼネラルマネジャー」の総報酬額の中位値を基準に、この金額に対する毎年の総報酬額の全実在者の中位値を、比率として計算した。次に年ごとの微細なゆらぎを除去して傾向を示すために、それぞれの職種で3年間の移動平均をとり、平滑した。また、比率の計算に利用した金額はすべて各年の数値をそのまま使用しており、インフレ率や物価上昇率などによる補正は行っていない。最後に、統計数値は毎年の全参加企業を対象として算出したものであり、企業の規模や業種等を揃える絞り込みは行っていない。
 このグラフは、20年間にわたる参加企業のデータから得られた、大きな方向性を示すものとして解釈されるべきであり、年次の細かい変動や数値の意味合いを引き出すためのものではない。

 まず、ゼネラルマネジャー、テクニカルディレクターは、年次により多少の差があるものの、一貫して右肩上がりで総報酬が上昇していることがわかる。
 次にテクニカルディレクターに注目すると、開始当初の1980年代後半には、セールスディレクター、ゼネラルマネジャーと比して、かなり低い金額であった。その後一貫して上昇し、近年ではセールスディレクターとあまり変わらない水準となっている。
 セールスディレクターは、1990年代後半には対前年度でマイナスになっている年もあり、他の二つの職務と比べると、より「浮き沈みが激しい」職務であることがわかる。「失われた10年」の中でも最も記憶に残る出来事であった山一證券の自主廃業が97年11月、日本長期信用銀行の経営破綻が翌98年7月、また、2000年にはドットコム・バブルの崩壊が起きている。業績変動部分の多いセールス部門のトップの職務であり、経済状況が総報酬に大きく影響したものと思われる。
 上に示したグラフは弊社サーベイデータのごく一部を使用し、20年にわたる大きな時間軸の中での結果ではあるが、それでも上に述べたようなメッセージを得ることができる。ベンチマークジョブに基づく報酬調査は、社会状況と個別企業の戦略目標に応じて、必要な人材を確保し、適切に処遇する際のデータとして、人材マーケットに新しい光を当てることができると考えている。

報酬サーベイの今後

 ワトソンワイアット東京オフィスは、現在ハイテク企業に特化した「ハイテク業界報酬サーベイ」と、業種を限定しない「全業種報酬サーベイ」の二つを実施している。
 報酬調査の最も重要な基盤となるベンチマークジョブは、これまでアジア太平洋地域の各国のワトソンワイアットが個別に開発し、独自のものを利用してきたが、前回2006年度より、地域内で共通のベンチマークジョブに移行した。これにより、地域内で共通の基準による報酬水準の比較が可能となり、地域全体でより一貫したデータの提供が可能となった。
 今年度4月1日時点での報酬データを、6月中旬までにご提出いただき、レポートは9月に完成の予定である。
 また、本稿の限られたスペースでは紹介できなかったが、弊社報酬サーベイは、参加企業の人事制度と福利厚生に関して80に及ぶ項目を調査しており、給与水準のみならず、人事慣行についての情報もあわせてご提供している。
 報酬調査は対前年度比較が非常に重要であり、調査手法の改善や革新には注意深いスタンスで(しかしながら着実に)取り組んでいきたい。弊社のサーベイが、働く人々の適正な報酬設定に役立ち、これを通して参加企業の競争力が改善できるならば、私たちにとって望外の幸せである。
                                              (文責:増倉)

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